ラップタイムについて考える

サーキットを主なバイクの使い方としている筆者には馴染みの深いラップタイムですが、一般のライダーからすると“ラップタイム”といわれてもパッとしないのではないかと思います。
MotoGPなどについてもお話する機会の多い筆者の記事ではラップタイムについてあまり詳しく書いたこともなかったのですが、サーキットを走るライダーにとってラップタイムがどのような意味を持つのか、ラップタイムからどのようなことがいえるのかなど、「ラップタイム」という言葉に隠された様々な意味にについてお話をしたいと思います。
サーキットにおける支配的要素、ラップタイム
ラップタイムとは呼んで字の如く、そのサーキットを一周走行するのに必要であった時間を計測し、数値化したものを指します。
計測はコース上に埋め込まれた設備を使い行なわれ、その計測には路面温度や状況、天候、マシンスペックといった全ての外的要因は排除され、ただ「そのサーキット一周における走行タイム」を常に計測し続けます。
外的要因は主にレースコンディションとして前提条件に含まれるだけで、ラップタイムその物の数字にそれらは含まれません。
レースではあくまで一斉にスタートしてからゴールした順番で順位が決められますので、レース中のベストレコード保持者が必ずしも優勝する訳ではありませんが、肝心のスタートにおけるグリッド順(スタート列の列順)を決めるためには予選で行なわれるタイムアタックで最も速いラップタイムを記録したライダーから順番で決められていきます。
前述の通り、そこに外的要因は加味されませんのでラップタイムは常に支配的であり、そのコースにおいて「速いライダー」を定義する上では必要不可欠な要素とされています。
ラップタイムの計測方法
ラップタイムはコース上に設置(埋め込み)された信号受信機の位置を、送信機(ポンダーと呼びます)を装備したマシンが通過することで計測されます。
ポンダーはマシンの前後に装備することで全長分のタイムギャップが発生し得るため、レース毎に装着場所が定義されており、極力マシン間の装着位置における“誤差”がなくなるように工夫されています。
上記の通り、ラップタイムを計測するためにはコース上に設置される信号受信機とマシンに装備される送信機のペアで成り立ちますから、マシンにも信号送信機を取り付ける必要があり、国内ではサーキット毎に取り付け位置が変わります。
バイクの場合、取り付け位置の自由度が限られていることもあり、多くの場合にはマシンの後方、リアカウル上にテープ等で固定する場合が殆どでしょう。
計測に用いられる技術的手法とは
ラップタイムの計測方法には大きく分けて3つの方法が考えられます。
内2つはサーキットに常設される設備を使っての方法となり、3つ目はサーキットの設備に依存しない独立したラップタイマーとなります。
●磁気計測方式
日本国内では一般的で殆ど全てのサーキットが使っている手法です。
磁気バーと呼ばれる磁石の線がアスファルト下に埋め込まれており、その上を送信機をつけたマシンが通過することで通過→通過までの時間を計測する方式です。
サーキットによっては“セクター”ごとに磁気バーが埋め込まれているため、一周だけのタイムではなく、セクターごとのタイムを記録することができるコースも存在します。
例えば筑波サーキットのコース2000は3セクターに分割されており、計測ポイントは前部で4箇所が存在します。
セクター1がコントロールラインから第一ヘアピン出口まで、セクター2が第一ヘアピン出口からバックストレート終点まで、第三セクターがバックストレート終わりから最終コーナー、コントロールラインまでを計測しており、それ以外ではピットロード上に1つのポイントが埋め込まれています。
通常サーキットからレンタルされる計測機(送信機)ではラップタイムのみを閲覧することができますが、社外品であるラップショットなどを使うことでセクタータイムを確認することができます。
●赤外線計測方式
赤外線による受光でラップタイムを計測する方法ですが、基本的には磁気タイプと変わらずコースに設置された赤外線送信機と、マシンに装備された受光デバイスの組み合わせで成立します。
筆者は赤外線計測方式のラップタイマーを使ったことがありませんので詳しくはあまり知らないのですが、赤外線である為にジムカーナのような8の字コースがある場合、マシンの向きがスタートとゴール時点で逆向きになることなどから少々セッティングが面倒なようです。
●GPS計測方式
サーキットによる付帯設備関係なく、衛星とのGPS信号やり取りでマシンの位置を把握し、ラップタイムを計測する手段です。
計測機自体には幾つかのパターンがあり、筆者が使っているデジスパイス2のようなデバイスである場合、デバイスはあくまでGPS信号の送受信だけを行いコースレイアウトデーターとGPS信号データをパソコン上で重ね合わせて走行データ閲覧を可能にするタイプと、デバイス本体にコース情報が記録されており、リアルタイムで走行データとラップタイムを閲覧できるタイプがあります。
一昔前はGPSデータとサーキットが公式で認める磁気センサによる計測データでは1秒前後の誤差がありました。
昨今ではGPS信号の精度が向上しており、殆ど誤差がありません。(コンマ0X秒)
ラップタイムからフィードバックされる情報
ラップタイムはあくまでサーキットを周回する時間ですが、前提となるマシンコンディションやサーキットコンディションなどの外的要因と組み合わせることで、「特定の条件下におけるラップタイム」を抽出できます。
これが非常に大切となります。
ラップタイムから抽出できるいろいろな情報については次回また詳しくお話したいと思います。